2012年5月27日日曜日

ふくふく11・5月(第1回)報告:震災と女性障がい者のとりくみ


「パネルと写真展 第五福竜丸-福島」の開催のために集まったグループふくふくでは、ことし、「ふくふく11」と題して、毎月11日に集まって、そのときどきに参加者の気になっている問題について学び合う会をもつ試みをおこなっています。
 数回の話し合いのなかで、震災と原発事故を機に浮かび上がってきた「生きにくさ」-とりわけ女性や障害者の抱える-を考えていこうという方向が見えてきました。第1回「ふくふく11」は5月11日(金)に、堤愛子さんの「反原発三部作」(
http://dpiwomen.blogspot.jp/2011/04/blog-post_24.htmlにリンクがあります)をテキストに議論をしました。堤さんのこのテキストは、チェルノブイリ原発事故後に盛り上がった反原発運動のなかに見られる「障害」や「奇形」への忌避感=差別を指摘し、障害者の生きにくさは障害そのものにあるのではなく、それを社会がどのように扱うか、そこにあるのだと告発した文章です。
 議論のなかで参加者のひとりがDPI女性障害者ネットワークを紹介してくれ、もうひとりの参加者が、このネットワークが発行するリーフレット「あなたの避難所にこんな方がいたら」について、会での議論を踏まえてまとめたものをご紹介します。

 最後に院内集会:「障害のある女性の生活の困難・複合差別実態調査」報告会(613日(水))のご案内もあります。


*********************************


震災と女性障がい者のとりくみ





先月(20124月)14日に、福井県庁を訪れた枝野経済産業相が大飯原発の再稼働をめぐって関電管内の電力不足が「社会的弱者にしわ寄せを与え、日本産業の屋台骨を揺るがす可能性が高い」と危機感を表明“したというニュース(http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/politics/34157.html)を見て、そういえば電力の必要な介護機器をふだん利用されている障がいのある人たちは、どのように震災をくぐりぬけてこられたのだろう、と思ったときに知人から教えていただいたのが、DPI女性障害者ネットワークhttp://dpiwomen.blogspot.jp/

のサイトでした。 こちらのサイトからは、2011425日に発行された「あなたの避難所にこんな方がいたら」というリーフレットをダウンロードすることができます。このリーフレットには、(1)障害のある人に共通して望まれる支援、(2)障がい別に必要な支援者、支援器具等、(3)障がいごとに必要な具体的な配慮や注意:対策肢体不自由、視覚障害、聴覚・言語障害、知的障害、精神障害、難病・慢性疾患の場合などが書かれており、節電や計画停電が必要になった場合にも応用のきく内容だと思いました。

 そのリーフレットなのですが、一番目につくところに、こんなことが書いてありました。



・障害のある女性は、ふだんから情報が届きにくく、声をあげることがさらに難しい、ニーズを出しにくい立場におかれています。

・介助や補助が必要な人や呼吸器をつけている人などのなかでも、特に女性は、生きる優先順位を自分でも低めがちです。平時の社会でも、人工呼吸器の装着が必要になった場合、女性のほうが男性より、呼吸器をつけて生きることを選ぶ人の割合が低いというデータがあります。

・女性の身の周りの介助、とくに着替え、トイレ・入浴は、女性による支援を徹底してください。



 このような注意がなぜ必要なのか、最初はぴんと来なかったのですが、上記ブログの団体DPI女性障害者ネットワークが20123月に発行した「障害のある女性の生活の困難―人生の中で出会う複合的な生きにくさとはー複合差別実態調査 報告書」を読んで、ひとことひとことが重く胸に響いてきました。

 報告書は、昨年5月から9月にわたって行われた「障害のある女性の生きにくさ」についての調査と、制度・政策調査の二部に分かれています。(巻末に、避難所などでの対応を書いたリーフレットの原稿、ブックリスト、障害女性が登場するビデオ・DVDのリスト、調査協力依頼文・調査票付)

個別の「生きにくさ調査」は、回答票と聞き取りで87人を対象に行われ、得られた回答をすべて要約し、問題別に15の項目に分類したものです。その項目は「性的被害」「夫や恋人などからの暴力」「就労」「恋愛・結婚・離婚」「性と生殖」「家事・子育て・家族の介護」「介助」「無理解」「教育」「制度・慣例」「女性として尊重されない」「医療の場で」「経済的な問題」「希望すること」「その他」です。これらの回答を読んでいると、職場や学校、家庭といった身近な場所で、女性でありかつ障害があるということが、どれほど生きにくさをもたらすものかがよくわかります。

また、制度・政策調査編は、都道府県の男女共同参画計画と、DV(ドメスティック・バイオレンス)防止計画に、「障害女性」についてどのような記述があり、どんな支援が行われているかの調査結果と、「DV被害者支援の現場から」「ある障害女性の裁判を通して」といった女性支援の現場からの報告からなっています。

このふたつのパートを合わせて読むと、これだけ制度の不備や社会の無理解・偏見があるなかで生き抜いてきた人たちの勇気と強さに、大臣だけではなく、ともすれば私たちが都合よく使ってしまいがちな「弱者」という言葉の意味を考え直さざるをえません。

 最後に、今回の調査で明らかになった「障害女性の困難」=複合差別と、それに対する政策の不在について、613日に院内集会が開かれるそうです。障害者運動のなかでも、女性運動のなかでも、気づかれずに放置されてきた部分の多い「女性固有の困難やニーズ」に耳をかたむけるよい機会だと思います。(集会参加者には、上記報告書が一冊配布されます)


院内集会:「障害のある女性の生活の困難・複合差別実態調査」報告会
6
13日(水)11301300(予定)
場所 衆議院第2議員会館第5会議室
連絡先: dpiwomen(a)gmail.com (a)をアットマークに変えて送信してください。

(ご案内)障害女性は、 障害があり女性であることから、この社会の中で複合的な生きにくさを抱えています。女性障害者ネットワークが2011年度に行なった、「障害のある女性の生活の困難 人生の中で出会う複合的な生きにくさとは(複合差別実態調査)」の報告会を行います。報告会では、この1年間に行ってきたアンケート、聞取りによる87人の障害女性の声をお伝えすると同時に、都道府県の男女共同参画計画 DV基本計画のなかにみる、障害女性に関わる施策の現状をお伝えします。 この調査結果から、私たちは障害女性の抱える問題に対応し実情を改善する施策の必要性を痛感しました。とくに、現在検討されている「障害者差別禁止法」に、障害女性のための条文を作って欲しいと考えています。  ぜひ多くの方にご参加いただき、ご一緒に、障害女性の現状を共有し、今後につなげていくための一歩を進められたらと思っています。ご参加いただいた方には、報告書を一冊お渡しします。